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「王国」よしもとばなな著を読む

王国 その1 アンドロメダハイツ
王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法
よしもとばなな著 新潮社 2002年初版発行

図書館に行ったとき
なんとなく惹かれて借りた本
久しぶりにばななさんの世界に触れて
読み終わった余韻が気持ちよくて
こんなに寒い日がつづき
ちょっとカサカサのハートに
染み込んで来たフレーズを書き留めておきます

人里離れた山奥で
薬草茶を処方するように作ってきたおばあさんと
雫石という孫娘が、山から離れ
別々の生活で様々な人々と出会うストーリー。

タイトル見たとき、その2を読みたくて借りたけど
ほとんどがその1に詰まっていました

その1 P23
「神様が何かをしたくてもあっちには言葉がないから伝えられないでしょう?
だから私みたいな人が代理で働いているだけで、私が何かをしているわけではないんだよ。そしてすべての仕事は本来そういうものなんだよ。」

おばあさんのコトバ。

人がいるところには必ず、最低のものもあるけど
最高のものもある。

作中にはいろんな植物、特にサボテンが登場します
おじいちゃんの書斎で咲いていた「竜神木」
主人公の名前にもなった「雫石」
サボテン公園にも行ってみたくなる

その2

 P32
大きな、ほんとうの目で見れば自分のしたことは絶対に消せないし、今までしてきた仕事や生活の型は必ず体のまわりに残ってしまうものだから、やりなおすということは厳密にはとてもむずかしい。だからできればなにごとも慎重にやるべきなのだ。自分のまわりはこれまでしてきたことや失敗したことやごまかしてきたことが、ぼんやりと層を作ってその人の輪郭をぼやけさせたりする。

そして人間をじっと観察した結果、人間というものは浅い、痛みのない生活を求めながらも、深いところでそれにやっぱり抵抗するものだというように思えた。だからこそ、私はまた仙人めいた暮らしに戻ることもせず、友達や恋人のいるここにい続けることにしたのだろう。

P63
「そうやって扱われたものには、そういう荒っぽい色がついてしまう。そして、一回つくとなかなか取れなくなって、人のほうがそれに操られるまでに力を持ってしまう。はじめのところが肝心なんだよ。」

染裕もつくづく思っています
染める前に生地を大切に扱わないと、そこの記憶も一緒に染まってしまうって。
染の作業場って散らかっててお恥ずかしい状態なのですが
腕の良い職人は作業場が綺麗で動きが無駄なく美しいんです。。。
液や生地っていろんな事を記憶していくんです。

しばらくは、、、
染めをする前の準備だとか、作業場の片付けとか
自分の気持ちの整理が必要で
「染める」という行為から距離を置いてみようと思っています。

P127
きっと心の目で見れば、人間の世界はいつだってこんなふうなのだ。真っ暗な宇宙世界に、ものすごい数の人間の光がただよい、つながりあい、光っている。ここには生死の区別もなく、大地も空もない。時間というものも存在しない。でも光がある。そのくらいに人間の光は強いものなのだ。

なんとなく、の、感じを
言葉にすくいあげるばななさんの文章は
ストレートにしみ込んできました。

P128
ああ、なんと愛しいことだろう、それぞれ違っているからこそ。そして、私はこの人生でもっとたくさんの光たちとまた触れ合っていくのだ。生きているかぎり、出会いと別れは続く。会う人みんなをどこかしらでは知っている。

さらに漕ぎ出していけよ、私よ。新しい日常の中に、この小さな光をもって。

このタイミングでこの本に出会えた事を
本当にうれしく思いました。


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