前回からの続きで その2です。
1.藍染筒描「鯉の滝昇り」の制作秘話
2.2005年 第3回染工房裕 横浜赤レンガ倉庫展示会
3.2009年 堀内さん横浜マイスターに選定!
4.美とんさくらい岡村店で染裕展示
——————————————————————————–
2.2005年 第3回染工房裕 横浜赤レンガ倉庫展示会
——————————————————————————–
懐かしいなぁ、大学時代に一緒に「キャンパスクラブ」というサークルみたいな活動していたメンバーです。(当時の写真少なく無断掲載お許しを)
洗い上がって濡れたままの鯉の滝登りを展示しながら乾かして、あぁ間に合った。
当時も今も、会場に展示してお客さんが入ってくる前の短い瞬間、会場で一人眺めるのが好きなんです。お客様に見て頂いたり、衣類だと購入して愛用頂くのはホントにうれしいのですが、藍染めの筒描を広い空間で一人静かに眺めると、いろんなイメージが降りてきてこの瞬間が至福の時。
確か、やっと乾いた頃、昼過ぎじゃないかな
会場で接客してくれていた姉が(←そうです、コノヤローの姉貴です)が
「どうする?鯉の滝昇りは幾らで販売してるのってお客さんいるんだけど、、」
もう即答で『非売品!』だめです、お断りください。
5分後「ねえ、幾らぐらいなら売ってくれるのってお客さん聞いてくるんだけど、、」
『だから売りもんじゃねーし。』
10分後「あんた説明しなよ、自分でさぁ。あの客さんだよ」
姉貴に説得され説明に行ったそのお客様が堀内さんでした。
実はこの筒描は出来たばかり、こんな経緯でさっき乾いたばかり
どうしても手放したくないのです、申し訳ございません。
丁寧にお断りしたのですが、、、それから2時間。。。
堀内さんに説得され続けてしまいました。
料理人でトンカツレストランを経営している事。
認めてもらいたくて一生懸命励んできた、
食肉の事を研究し、ソーセージやハムの製法は本場海外で様々な賞を受賞
やっと日本でも認められてきた。職人は良いモノをつくったら自己満足してちゃダメ
多くの人に見てもらって、認めてもらわなきゃならない事。
自分の店に飾る「鯉の滝昇り」をずっーと探しまわってきた事。
今日は仕事の打合せで近くまで来て、たまたま駐車場がいっぱいで
赤レンガ近くに駐車、立ち寄ったら探していた「鯉の滝昇り」はこれだ!
と直感で判断した事。
ホントは暖簾に仕立てたいけれど、そんな想いで染めたのならば額に入れて飾ろう、
君のプロフィールも添えよう、
店には一日200人以上の人が来る。
多くの人に見てもらえるぞ、いいモノが染まったなら
多くの人に見て知ってもらわなきゃ!
はじめはしつこい人だなぁ、と思いながら
お断りの説明していたのですが、、、
だんだんと説得されている自分がいました。
ただの欲しいだけの人じゃない、モノづくり同士だから共有できる事、
認めてもらえず悔しくて励んできた反骨精神、職人としての誇りと
まだまだ若造で無名で自己満足で悦に浸る染裕へのアドバイス、
そんな堀内さんから発せられる熱いコトバ達に、
どんどん気持ちを持って行かれてしまいました。
自分の自信作が生まれたばかりで手元から離れていく寂しさと
はじめて自分の筒描が「認めてもらえた」という喜びと
この数週間の張りつめた気持ちが一気に解けていく脱力感とで
呆然としながらも、いつか染裕がどこかで展示会をする時は
この「鯉の滝昇り」も必ず出品させてくださいね、とお伝えして
堀内さんの連絡先を控えさせて頂きました。