『いねむり先生』 伊集院静 著
先日の「琥珀の夢」につづき読んでみました。
いねむり先生とは、色川武大という実在の人物らしく、
ギャンブルやお酒の日々を綴った自伝的小説。
P56
「芸人というのはそういうものです。皆が皆、生きてるうちに咲くわけではありませんから、散り方を会得するんでしょう。粋というもんより、むしろ気障を連中は好むんです。芸人の性というのは、あれで恰好はいいんですね」
P57
「フレッド・アステアの動きには無駄なものがないんです。計算をしてなくてですから、それが傷になっているように私には思えます。どこかで崩れがないとバランスがとれない気がします。その点、いっときの浅草軽演劇もそうですが、アメリカでもB級と呼ばれているスラップスティックの作品は観ていて飽きがきませんね…..」
P168
「漁師が船べりに立って汐目を読むように、ギャンブルも汐目が、流れが読めないとね。出と引っ込みが半端じゃ、泥舟になってずるずると沈むだけだ。それが一番悪い。出の時はなり振りかまわず突進して、流れがないなら、そこはきちんと引っ込むことに徹しないとね」
P292
在る人に言わせると、この因縁というものが人と人を逢わせ、別離させるのだという。家族というのも因縁が濃いだけで特別のものと考えなくていいという。大概の人は因縁の濃淡にこだわりしがらみをつくって、それに縛られているらしい。 二年前、ボクは人間関係を拒絶しようと決め、それに徹していた。それまでの付き合いを捨ててしまうと、これが想像以上に楽で、物事の基準が明確になる。人に依ることを断ち切れば、野球でいる守備範囲を狭くした分、余計な動きをしなくてすむ。
P344
『リズムですよ。正常なリズムで過ごしているから人間は普通に生きていられるんです』
P346
“自分のどこかがこわれている、と思い出したのはその頃からだった。漠然と感じる世間というものがそのとおりのものだとすれば、自分は普通ではない。他人もそうなのかどうかわからない。他人は他人で、ちがうこわれかたをしているのか、いないのか、それもよくわからない”
「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ著
この物語はどこまでが実在なんだろう。
少しだけストーリーを知ってから読み進めたので、途中辛かった。
キーワードだけ書き留めておきます
・ヘールシャム
・「夜に聞く歌」ジュディ・ブリッジウォーター
紙つなげ!彼らが本の紙を造っている
再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子著
いろんな偶然で読んだ本。
P145
「文庫ひとつ取っても、いろんな人が考えて作ってるんですよ。文庫っていうのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤、普段はざっくり白いというイメージしかないかもしれないけど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持っているんです。特に角川の赤は特徴的でね、角川オレンジとでもいうんでしょうか」